制作年月:2020年
サイズ:6号
材料:雲肌麻紙・顔料・膠・金属泥
個人蔵
私達が肉眼で目視出来ない微細なウィルスに物理的に対抗できる手段は科学や医学の力であるのは明らかですが、
コロナ禍の収束が見えにくくなっている現状にあって、宗教や芸術や娯楽の持つ力、救い・美しさ・楽しさといったものが私達の気持ちや心の健康にとって必要なものだ、という事を切に感じてしまいます。
現在日本では「アマビエ」という妖怪がクローズアップされ、テレビやSNSで紹介されていますが、私は中国・唐代の民間伝承から生まれた「鍾馗(しょうき)」という神様をテーマにしました。
右手に破魔の剣を構えて勇ましく鬼達を捉える姿は病魔や厄災を退けるものとして、日本でも平安時代頃から広く長く信仰されています。
この「鍾馗捉鬼図(しょうきそっきず)」では、子虎にまたがった幼き鍾馗が無邪気に鬼を捉えた様を描いております。この後この鬼をどうするかは鍾馗次第です。
鬼=コロナウィルスとするのであれば(ウィルスそれ自体には意思は無いものですから)一方的に悪役に仕立ててしまうのも少々理不尽です。
この複雑な現代社会においては、このコロナウィルスをただ駆逐・滅殺するのでは無く、今後もこの様な災害や不安に再び見舞われた際、どの様な気持ちをもって振る舞い、己の行動を選択して生きていくか、という事も問われているような気がしてなりません。
人類は度々ウィルス・感染症に晒されながら生き残ってきた歴史を持ち、今回もゆくゆくは収束を迎える事は間違いないのですが、その日が一刻も早く訪れる事を心から願いつつ制作させて頂いた作品です。