制作年月日:2009年
サイズ:M20号(727mm×500mm)
材料:雲肌麻紙・顔料・膠・箔
個人蔵

 「黄河にある竜門という滝を上りきった鯉は竜になって天に昇る。」という中国の故事があります。
それが日本に伝わってきて、立身出世の象徴として端午の節句には鯉のぼりを掲げると同時に、葉に強い香りがある事から、菖蒲を飾ったり菖蒲湯に浸かり邪気を祓うといった事も広く行われています。
この後一気に天へ駆け昇っていく龍の子ではありますが、滝を登りきった後なので、そこはやはり疲れもあります。いずれは天へ昇るのですから焦る事はありません。ほんの一息付く事もあっても良い筈です。大きな力や事を成す為には、一瞬の「溜め」も必要かと思います。
この「謐」では、密やかに菖蒲の咲く池の中で、竜門の滝を昇りきった鯉が玉の上に座り、大きな力を溜め込みながら龍へと変化している様を私なりの想像で描いたものです。