禁断の実

(C) KEN SHIOZAKI

制作年月日:2001年6月
サイズ:F0号(140×180mm)
材料:雲肌麻紙・顔料・膠・箔
個人蔵
撮影:栗生浩一

  旧約聖書に出てくる有名なシーンで、アダムとイブがエデンの園を追われる場面があり、その原因となった「善悪の知恵の木になった実」というものがあります。

林檎や無花果(いちじく)の実をモチーフにしているという説がありますが、蛇がイブをそそのかした為に二人は知恵の実を口にしてしまいます。「食べてはいけない」という神の言葉を守らなかった罪は重く、二人は天使に急き立てられてエデンの園を追われてしまいます。(この作品では林檎をモチーフにしています。)

私は、二人が誘惑に負けてしまったその知恵の実に、他の動物と違って人間が持つ最大の武器である知恵(知性)のまばゆさと、底知れぬ暗い欲望のかたまりが等しく同居しているのを感じてしまいます。
林檎の実とそれにからみつく蛇を描いたこの作品は、善悪相反するものを包括しているものにこそより大きな興味を示してしまう人間の、面白くも哀しい性を描いたものです。